「私も頼るからあなたも頼って。」想いの連鎖が生んだ、だれもがほっとできる場所。

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オヤノミカタの創業以来、パートナーとなっている大阪・十三のコワーキングスペース JUSO Coworking さん。

子連れでも利用できるワークスペースを提供するかたわら、『十三こども0円食堂』や発達障害を知るイベント『アオクスル祭り』など、地域に根ざしてさまざまな活動をされている運営の深沢周代さんに、この夏あらためてお話をうかがって来ました。

 

「コワーキングってなんだろう?」から始まった JUSO Coworking

コワーキングスペースは、さまざまな人が集まって一緒に仕事をしたり、アイデアやノウハウを共有できる空間です。フリーランスや起業家、もちろん会社員など誰でも利用できる場所として広まってきていますが、JUSO Coworking さんのオープンは2010年12月。7年近くも前に、日本3番目のコワーキングとして、大阪・十三の4階建て『水交ビル』の1室に誕生しました。

「私は当時、家業であるビル経営の手伝いを始めていました。ちょうど一人目の子どもが生まれ、夫にもフリーランスとして独立してもらったタイミングで、『コワーキングスペース』というのが神戸と東京で立ち上がったのを知って、出来ることはこれかもしれないと思ったんです。当時シェアオフィスという形がすでにありましたが、そこにコミュニティというものは生まれていない状態でした。もっとワイワイしゃべりながら働ける場所があったらいいなと思って、夫と一緒に立ち上げることにしたんです」

まだ日本にほとんどない中で、自分たち自身も「コワーキングってなんだろう?」と考えながらオープンしたという周代さん。可能性は十分感じていたものの、やはり最初はなかなか入居者が集まらなかったそうです。

「コミュニティをつくるために、入居者が一堂に集まれるイベントを毎週同じ時間に打ったり、会議室っぽい部屋だけだったのを、リビング用品が基調の空間を増やして開放的になるようにしたり。工夫を重ねて、本当に少しずつ増えていった感じです。入居者の方も一緒に場を盛り上げようとあれこれ考えてくださって、それはすごく嬉しかったですね」

3階の1室で始まったコワーキングは、その後4階フロアへ拡大します。この中で生まれたのが、JUSO Coworking さんの特徴でもあるキッズスペースでした。周代さんご自身が、一時期しか使わない育児用品の購入に悩んだときに、使わなくなったものはコワーキングで皆にシェアしてもらえばいい、と思いついたのがきっかけです。

「そもそも私が長男を子連れで来ていたので、入居者の方が連れて来れないというのも変ですよね。だったらいっその事、コワーキングと混ぜちゃえばどうかなって。試しに私がやっていた『家族ラボ』という家族交流のイベントを、コワーキングと一緒に同じ部屋でやってみたんですけど、別に問題は起きなかったんですよね。家族で来て、お父さんはパソコンで仕事していて、お母さんは子どもとキッズスペースで交流したり。たまにコワーキングの人がキッズスペースで子どもと遊んだり。そうすると家族でのお出かけにもなるし、こういう形も十分ありなんじゃないかと思いました」

子連れでも利用できるコワーキングになることで、子どもや家族同士の交流も生まれた JUSO Coworking さん。少しずつ可能性の幅を広げる一方で、周代さんはコワーキング運営とは別に、地域での新しい活動を始めていました。

『十三こども0円食堂』を経て、コワーキングを1階に

「最初のきっかけは、水交ビルのレンタルスペースの利用に大阪子どもの貧困アクショングループ(CPAO)代表の徳丸さんが来られたことでした。お話を聞いて、『子どもの貧困』というよりは『親のしんどさ』についてすごく分かる部分があって。私自身、1人目の子のときは自分の気持ちがパツパツで、育児がしんどかったんです。だから親が辛い状態を続けると、子どももダメージを負うなって、何となくピンときて。見えないところにしんどい思いをしている子どもさんや親御さんがたくさんいるという話は、聞けば聞くほど他人事じゃなかったんですよ」

そのときはすぐにできることが見つからないまま、モヤモヤとした気持ちを抱える状況が続いたという周代さん。しかしコワーキングの4階での体制も少し落ち着く頃に、各地で『子ども食堂』が立ち上がっているという情報が聞こえてきました。

「今なら何かできるんじゃないかな、と思って改めてCPAOさんに連絡をしてみたんです。言われたのは、『何をやればいい?じゃなくて、やれることをやったらいいんですよ』ってことでした。それで最初は勉強会でもしようとしてたんですけど、考えてみたらごはんくらい作れますもんね。やった方が早いと気づいて、とりあえず開催してみることにしました(笑)」

周代さんは、一緒にやってくれそうな人たちに声を掛け、手探りで活動を開始。食材はSNSを通じて集め、キッチンがない代わりに別の場所で調理してコワーキングに運び、当日のスタッフは活動を知った人たちが担ってくれました。

「実際やってみると、しんどい思いをしている親子がたくさんいることが分かりました。特に親御さんですね。子ども食堂の活動はお子さんにスポットが当たることが多いんですけど、私はどちらかというと、親のしんどさをちょっとでも軽くしたいと思って始めたんです。やっぱり親に余裕がないと、長く一緒にいる子どもは影響を受けやすいので。まずは月に1回の夕食だけでも『ご飯のことを考えなくていい』ってなれば、親御さんの気持ちも少しは軽くなって、子どもたちも笑顔になれるかなって」

2015年の年末に立ち上がった『十三こども0円食堂』は、回を重ねるごとに人数が増えていきました。4階のスペースだけでは手狭になってきたころ、水交ビルの1階テナントが空き、悩んだ末にコワーキングとしての増床を決意。2016年8月、キッチンスペースを含む形で新しい JUSO Coworking がスタートしました。

「1階への増床にはお金も時間も労力もすごく使いましたけど(笑)、それでもやれたのは『十三こども0円食堂』があったからです。強い使命感があったわけではないんですが、せっかく誰もがワイワイできる場所ができたので、それを続けたくて。自分が育児をして暮らしていく中で、こんな場所が地域の中であればいいな、を追い求めていった結果なんですよ。親に居場所があってちょっと楽になると、子どもたちも笑顔になっていきますし。なのでそういう親御さんとの繋がりをどう持ち続けていくかは、これからも課題だと思っています」

ビルの変化と『アオクスル祭り』

キッズスペースを持つ JUSO Coworking が表通りに面した1階へ移ったこと、子ども食堂の活動を継続したことなどを経て、ビル自体の雰囲気も少しずつ変わっていきました。

「明るくなったと思います。テナントさんも福祉系の方がいくつも入ってくれたり、ビルとしてのブランディングも少し出来てきたのかなって。地域の中で、いろんな活動に声を掛けてもらう機会も増えました」

そんな中、発達障害に関わる活動をされている一般社団法人みがくさんが水交ビルに入居されます。もともと発達障害に関心があったという周代さん。共同で『世界自閉症啓発デー』(4月2日)に、水交ビルをあげた啓発イベントを開催することになりました。

 

それがこちらの、『十三アオクスル祭り』。

http://aokusuru.com/2017

 

ビル全体を啓発活動のカラーである青に染めて、たくさんの人に発達障害を知ってもらおうという試みでした。

「地域では発達障害ってまだまだ知られていなかったんですけど、自分の子育てを通じて、すごく関心はありました。みがくさんがビルに来てくださることになり、一緒にやれることを考えたときに、ビルを青くするくらいできるかなって。実際動き始めると、地域活動の団体さんや企業さんなどがたくさん支援してくださって、すごいプレッシャーでしたね(笑)」

アオクスルでは、イベントの準備も運営も、また広報の活動も、地域の人々に本当に支えられたという周代さん。当日はたくさんの、そしてさまざまな人が訪れる1日となりました。

「想像以上に人が来てくれて、本当に良かったです。やっぱり初めての試みで、すごく不安だったので。ビル自体は外からのライトアップ…はできなくて、窓にフィルムを貼ったんですけど、思いのほか青くなってくれました(笑)。夜はかなり遠くからも見えて、『あれ何だったの?』って後から問い合わせもありましたし。何より嬉しかったのは、地元の人が来てくれたことですね。『実は知り合いにいるんだけどよく分かってなくて』という方がセミナーに参加してくれたり。発達障害について知らない方に知ってもらうのが目的だったので、地域の人たちがたくさん来てくれたことが、今回は一番嬉しかったです」

人に頼る、地域で混ざる

コワーキングの運営にとどまらず、地域の中での活動の中心となっていく周代さん。話を聞けば聞くほど、その『周りを巻き込む力』が、新しい連鎖を次々と生み出しているように感じます。

「今も基本、やり方は変わってないかもしれませんね。何かあったら『誰かー!』っていう(笑)。自分に自信がない分、私一生懸命やるので助けてください!というスタンスなんですよ。本当にありがたいことに声を上げてみると、やるなら手伝うよって方がたくさん出て来てくれて。子ども食堂もアオクスルも、やってみたら地域の人が目を向けてくださいました。コワーキングのメンバーさんもサポートしてくれるし、今はゆるく心地いい感じで、本当にたくさんの人に支えてもらっています」

『1人でも、頑張ればできなくないかも…』そう思ったとき、人はつい自分だけで解決しようとしがちです。仕事だけじゃなく、日々の子育てでも同じ。自分だけで、親だけで何とかしようと無理をしている人は、実は周りにたくさんいるんじゃないでしょうか。

「やっぱり声を上げないと伝わらない部分ってあるんですよね。でもそれは私自身、子育てや結婚生活から学んだことなんです。子育てがしんどくて、周りに対してイライラが続いたときに、『誰も自分が思ったようには動いてくれない』『何でだろう?』『そうか、言ってないからだ』って(笑)。助けてほしいっていうのは、言わないと伝わらないんですよね。それに気づいてから、とにかく自分の気持ちは、下手でもいいから表に出すようにしました。誰も自分の思い通りになんて動いてくれないからこそ、お互い言うことで相談が生まれて、そこから譲り合えたらいいかなって思います」

もっと周りの人に頼っていいんだ、と自然に感じさせてくれる周代さん。活動に込められた『私も頼るから、あなたも頼ってほしい』というメッセージが、1人1人の親の元へ届き始めています。そしてちょっとしんどくなった親たちが、自分で声を発することができる場所づくりを、これからも地域の中で続けようとされています。

「子ども食堂はもちろん、コワーキングとしてもビルとしても、地域に根ざした場所であることを目指しています。入居している色んな分野の専門家の人たちって、実は地域にとっても宝なんですよ。なのでそうした方々が、この地域でもっと混ざれるような関係性をつくれることも大きな目標ですね」

誰もが笑顔で過ごせる環境をつくることを、これからも大切にしたい。そうおっしゃる周代さんは、今日も周りの人と一緒に走り回っています。その活動からは、今後も目が離せません。

 

JUSO Coworking  https://juso-coworking.com/

十三こども0円食堂  https://www.facebook.com/kodomo.zeroen.shokudo/