親の味方たちの集うバル。何が彼らを突き動かすのか。【後編】

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前編に引き続き、オヤノミカタバルvol.2のレポートです。

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親の味方たちの集うバル。何が彼らを突き動かすのか。【前編】
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きめ細かい泡を生み出し続けるタオルを発明

「子育てをしながら、仕事を持つなんて、絶対にできるわけがないと、ずっと思っていました」

そう語るのは、肌を傷めない浴用タオル「あわみん」の開発者、あわみん本舗の岡本凉子さん。

子どもが小学生になり、少し手が離れた頃、学習塾を開校。しかし、心の中にあったのは、「何かを作りたい」という思い。

1975年に県立福岡女子大学家政学部を卒業、出産直前まで子供服のファミリアで新設されたばかりの品質管理室に勤務。ものづくりに対する興味は、幼い頃からずっと自分の中にあったと岡本さんは言います。

長い間「皮脂の分泌の多い背中をすっきり洗いたい」と思っていた岡本さんですが、ある時、習慣的に肌を擦り続けると黒く色素沈着をおこすことを知ったそう。

「肌を傷めずに、背中をすっきり洗えるタオルが欲しい!最初はそんな気持ちから、作り始めたんです」

タオルの開発を始めて少しずつ形になってきた頃から、周りの友人に試作品を配り、使用後の感想をもらう、そして改良…その繰り返し。

そんな中気づいたのは、敏感肌で悩んでいる人が、思った以上にたくさんいるということ。

そこで、「肌の弱い人も使えるタオル」を目標として特許を取得。マイクロ繊維を使用した特許構造のタオルは、自分の髪の毛先が当たっても痛いほどの敏感肌モニターさんにも「使える!」と保証され、開発を始めて10年「あわみん」が完成しました。

「大学の先輩の方々に配ると、”あわみん、とってもいいね!友人にプレゼントしたい”と、たくさんの注文が入って、すごく自信になりました。絶対このタオルを世に出そう!って思いました。」

商品化は、全くの素人だったという岡本さん。関係先の有難い協力で、なんと大手雑貨店での販売が決まり、それを機に、次々とメディアにとりあげられ、注目度が上昇。

岡本さんの夢が実現したのです。

発売して9年、届けられた喜びの声

「アトピーの我が子の服を脱がすたびに、剥がれた肌が雪が降るようにパラパラ落ちていたのに、このタオルを使って体を洗ったら、2週間で普通の肌に戻りました」

「重度心身障害の我が子の床ずれがひどく、ずっと悩んでいました。でも、生まれて初めて、タオルを直接肌に当てて洗うことができ、肌のベタつきが消えて状態が良くなりました」

「オストメイト(人工肛門)の使用で、かぶれていた部分を、このタオルの泡で洗うようにしたら、状態が改善されました」

そんな嬉しい声が続々と、岡本さんの元に届けられました。

「驚いたのは、”どこでこのタオルを知ったのですか?”と聞くと、”友達からのプレゼントです”と答える人が、本当にたくさんいたということです。」

子どものアトピーに悩む親から親へ、障害児の介護をしている親から親へ、オストメイトの患者から患者、その家族へ。

誰かが誰かを思い、広がっていった「あわみん」。

人は、友達、家族、大切な誰かが悩んでいると、「笑顔にしたい」という思いが湧き起こります。

「あわみん」を、誰かにプレゼントした人は、「あわみん」と出会った時、きっと、その大切な誰かの「笑顔」が浮かんだのでしょう。

「発明の話を聞きたい」と言って、岡本さんに会いに来る人もいるそうです。

“あわみん”って、実際どうなの?

岡本さんのプレゼンが終わると、「このタオル欲しい!」「私も買いたい!」という声が次々とあがりました。みなさんその場でお買い上げ!もちろん私も購入しました。

そして実際に今、自分の洗顔と子どもの体を洗う時に使っています。

少しの石鹸だけでも、ものすごくキメの細かい泡がエンドレスに出てくるので、とにかく楽しい!そして、とても気持ちが良くて、さっぱりとした洗い上がり。

何より、子どもたちが、「きゃあきゃあ」言いながら、喜んで泡遊びをしています。

これまで子どもたちの体は、私が洗っていたのですが、たっぷりの泡で体を包み込んであげると、私は何を言わずとも、勝手に自分で洗い出す!それも、全身くまなく(笑)本人たちは、ただ楽しく泡で遊んでいるだけなのですが…。

その間に、私はゆっくりと自分の洗顔や洗髪ができるので、お風呂の時間のストレスが一気になくなりました。たったそれだけのことのように思えますが、子どもとのお風呂の時間は、まだまだ手がかかり大変なのが現状。

「お風呂に入るよ!」の誘いには、決まって「いや!」ですが、「お風呂で泡遊びしよ!」の誘いには、100%乗ってきます。

「あわみん」に子育てを手伝ってもらっているなぁと日々感じています。

なかなかお風呂から出てこないのが、たまにキズですが(笑)

「私、あわみんの泡で洗顔をするようになって、小じわが薄くなったような気がするんです!うるおってるなあって…(笑)。これからも、もっともっと広げて行って、本当に必要としている人のところに、このタオルを届けて行きたいです!」

たくさんの人が、岡本さんに会いに来る本当の理由は、岡本さんのパワーあふれるその「笑顔」なのかもしれません。

ITの世界から缶詰の世界へ

最後は、株式会社カンブライト代表井上和馬さん。今回、オヤノミカタバルが開催されたお店「カンナチュール」のオーナーでもあります。

井上さんは、ITの専門家として15年間勤務、順調にキャリアを積み上げていましたが、2015年退職、その後すぐに株式会社カンブライトを設立。ITの世界から、缶詰を基軸としたビジネスに転身しました。ITから、なぜ缶詰…?

実は、そのきっかけとなった言葉があるそうです。

「仕事で海外に行った時、唯一放送されていた日本のドラマを毎週見ていました。それしか見るものがなかったから(笑)そのドラマで毎回出てきたセリフが、”君の志は何ですか?” つまり、君が人生をかけて成し遂げたいことは何ですか?と。なぜか、自分に問われているような気がして。」

帰国後も、ずっと頭の中から消えてくれなかった、その言葉。「残りの人生をかけて、自分は何ができるんだろう…」考えれば考えるほど、悶々とする日々。

そんな時テレビから流れてきた驚きの事実。20年後、自分の子どもたちが大人になる頃の食卓には、日本で採れた食材が、ほとんど並ばないということ。

もともと食に対する興味があり、週末は自ら考えたレシピを元に、食材を調達し、料理を作り、家族や友人に振舞っていた井上さん。「食で人を喜ばせる」…それが何より楽しい時間だったとか。

そんな井上さんにとって「20年後の食卓」それは、信じがたい現実でした。

「生産者を支援したい、その為の仕組みを作りたい。これを新しい事業として立ち上げたら、そこに大きな意義があるんじゃないだろうか…。」

この時、”自分の志は何か”…ずっと問い続けてきたことに対する、一つの答えが出たような気がしたと、井上さんは言います。

缶詰に詰め込んだ井上さんのミッションとは

缶詰は、肉、野菜、果物、どんな食材でも扱うことができ、賞味期限が3年もある為、日本の食材を海外に輸出し、広める為のツールになると考えた井上さん。

そうすることで、一年のうちで収入を得る時期が限られている生産者が、継続的に収入を得ることができるようになる。

またその為の加工場を、それぞれの地域につくり、地域の特産物をブランド化し、販売することで、地域の生産者を支援し、延いては20年後の「日本の食」を守ることにつながる…そんな壮大なミッションが、井上さんの缶詰に詰め込まれているのです。

食を通して伝えたい、本当のこと

「僕の母が作る料理は最高でした。母は、仕事をしていたので、毎日とても忙しくしていたけれど、ご飯だけは、絶対に手抜きをしない人でした。だから小学生の頃、外食した記憶はほとんどないんです。でも僕が何より嬉しかったのは、台所で母と話をする時間でした。」

井上さんにとって最高に幸せだった時間、それは料理を作る母の隣で過ごした時間。

井上さんの言葉を聞き、そういえば私も、夕飯の支度をする母の隣で、その日あった学校での出来事をよく話していたな…と懐かしくなりました。

でもそれと同時に、胸の奥にわずかな痛みを感じました。

「私は子どもたちに、そんな時間を作ってあげられるだろうか」

夕飯の支度をする時は、まず、テレビでアニメを流して、子どもたちの気を、完全に私からそらせている間に、料理を作ります。子どもたちが火元に近づかないように、キッチンの柵を閉めているので、料理をしている私の姿を、近くで見ることもありません。

全ては、子どもたちの意識の中から、私の存在を消すために。

「料理を作る」その目的を達成するために、そうするしかなかった、これまでの子育て。1歳頃までは、一日のほとんどが抱っこ抱っこで、夕飯の支度のために離れると大号泣。キッチンの柵にしがみついて泣きわめく我が子の姿が、今でも脳裏に焼き付いています。「誰か助けて…」と思いながら、一分一秒でも早く料理を作り終えるために、毎日必死でした。

「30分だけでもいい。あの時、子どもを抱き上げる誰かの手があったなら…」

振り返ると、そう思います。だから抱っこの必要がなくなった今でも、私は無意識に、テレビに「子守」をさせてしまっているのだと思います。

井上さんはこう続けました。

「たった5分でもいいんです。出来合いの物でも、そのまま出すんじゃなくて、お皿に盛って出すとか。親が最後の一手間をかける姿を、子どもたちはよく見ているし、一番よく感じています。僕たちの缶詰が、料理の90%まで完成させておけば、あと10%は、家庭での一手間。それだけで、最高に美味しい料理が食卓に並ぶ… 僕たちの缶詰は、そんなお手伝いがしたい。」

「料理を作ること」は、決して「目的」ではなくて、ひとつの「手段」

美味しい料理を食べる「幸せ」を感じるために。
誰かと一緒に食べる「幸せ」を感じるために。
全ては、心の栄養を満タンにするために。

地域に缶詰の加工場を作っていきたい…そんなミッションを達成させるための課題は山ほどある、と井上さんは言います。今はそのベースとなるWebサービスを開発中で、2018年春にリリース予定とのこと!

「ついに、15年のIT業界の経験を生かす時が来た!」

力強い言葉がスライドに映りました。

人生のレールは、どこに向かい、どこに繋がるのか…予測できないからこそ面白い。

しかし、どんな時でも決して見失わないもの。

それは、ずっと自分に問いかけてきた「志」。

親の味方たちの描く未来

予想以上にアツイ「親の味方」と出会うことができた、今回のオヤノミカタバル。

子育てと事業?ビジネス? 正直、プレゼンを聞くまでは、ピンときていませんでした。でも今回のプレゼンターの方々は、みなさん共通して、事業の先に「人が喜ぶ姿」を描いていました。というより、それが揺るぎない「核」となっていました。

だから、プレゼンを聞いていると、自然と「誰かの笑顔」が浮かんできました。そして幸せな気持ちと、この上ない安堵感に包まれました。

「ああ、この時代に子育てができてよかった…」と。

 

撮影:Makibi
https://www.itowaphoto.com/