幸せは、今、目の前にある。他界した娘との日々を綴った本が教えてくれた「大切なこと」とは?

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オヤノミカタ代表の松井です。2017年12月5日、京都にてイベントを開催しました。

> 親の味方となる時間 vol.1 〜 今、目の前にある幸せの見つけ方 〜

生後半年で他界した娘との毎日を綴った My Happiness Rule の著者、田中美帆さんをゲストにお迎えし、参加者全員で「大切にしたいこと」について対話するという内容。涙あり、笑いありの会となりました。

あなたはこどもとどう暮らしたいですか?

会場は、京都の岩倉にあるMAISON Doue(メゾン ドウウエ)。花とアンティークを扱うお店で、普段から子連れOKなワークショップも開催されています。店主の堂上さんは、2歳のこどもの母親でもあります。

今回のイベントは少人数制。まず、お集まりいただいた10名の自己紹介からスタート。各々、この会に参加した理由についてもお話しいただき、わたしからもこの会の趣旨についてお話ししました。

わたしがこのイベントを企画したのは、田中美帆さんの My Happiness Rule を知ってもらいたいという思いからでした。

生後半年で他界したお子さんとの日々を綴った本と聞くと、悲しいストーリーを想像するかもしれません。しかし、読んでいただけると分かるのですが、この本には「目の前にある幸せを、もう一度、見つめ直してみませんか?」というポジティブなメッセージが込められています。

わたし自身の話になりますが、「どうすればうまく子育てできるか?」を追究し、たくさんの育児書を読み漁っていた時期がありました。しかし、追究すればするほど、子育てに結果を求めてしまい、思い通りにいかないことへのストレスを溜めていくことに。

今、思えば、子育てを仕事のタスクと同じような感じで捉えていたんですよね。まさに、目の前にある「こどもと暮らす幸せ」を見失っていた時期でした。

わたしが田中美帆さんの My Happiness Rule を読んだのは、それからもっと後だったのですが、その内容に感銘を受けました。「あなたはこどもとどう暮らしたいですか?」、そう語りかけられているような感覚。「うまく子育てする」よりもっと大切なことがある、そう感じさせてくれた本です。

それでは、ここから、イベント当日の様子をお届けしていきたいと思います(※わたし松井と田中美帆さんとの対話部分を抜粋しています)。


「幸せってなんなんやろ」と考えるようになった。

田中:皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。ひとり目の娘ハルは生後半年で亡くなったのですが、そのハルとの日々を綴ったこの本を、多くの人に知ってもらいたいと思っています。

でも、まだ自分の中で消化しきれない部分があって・・。松井さんと打ち合わせしているときも、レストランだったんですが、泣きすぎてしまって・・。

松井:田中さん、本日はよろしくお願いします。わたしは、はじめてこの本を読んだとき、涙というよりは、どちらかというとパワーをもらったんですよね。すごくポジティブなメッセージが込められているなと。

田中:悲しんでほしいとか、感動してほしいとか、そういう思いで書いたんではないんですよ。だから、松井さんの意見は嬉しかったです。

松井:序章のところに、「最高に幸せでした」、「たくさんの愛を日常の中に見つけてほしい」という文面があります。これって、こどもと暮らしていく上で、究極のものなんじゃないかなと思えたんです。

以前、育児書をたくさん読んで、「うまく子育てしよう」と模索していた時期があったんですが、その頃にこの本に出会えていたら、また考え方も変わっていただろうなと。この本は、今まで読んできた本とぜんぜん違う。

田中:もし、娘が健康に産まれていたら、気づけなかったんじゃないかなーと思うんですよ。仕事ができないとか、夜に出かけられないとか、きっと「できないこと」に焦点をあててしまうこともあっただろうなーと。

でも、この子が病気を持って産まれてきているから、そんなこと考えている暇もなくて、とにかく一日一日を大切に過ごそうと。そういう日々を送る中でだんだん「幸せってなんなんやろ」と考えていくようになったんです。

松井:そういった立場に置かれて、自然と「幸せとは何か」を見つめるようになった、と。

「ハルがどう思うか?」を規準にすることにした。

田中:わたしは、普段、ブロガーとしても活動しているんですけど、最初はブログにも書いていなかったんですよ、病気のことを。もちろん娘のことを思って書いていなかったというのもありましたけど、自分を守っていた部分もあったんです。

「病気の子の親」という目で見られてしまう怖さもあったし、「闘病中の娘がいるのに仕事をしているなんてありえない」という声も出るやろなーとか、いろんなことを考えて書けなかったんです。

でも、娘が負のオーラをまったく感じさせない子だったんですよ。いつも笑っていたし、手術のときもぜんぜん泣きもしなくて、ケロッとしていて。その子と接することで、わたしのどうでもいいプライドみたいなものが、すごく馬鹿らしくなってきて。誰のために守っているんやろ、このプライド、みたいな。

だから、「ハルがどう思うか?」を規準にすることにしたんです。それまでは、いろんな人の目を気にして生きていたんだなって、今は思いますね。強くなったと思います。怖いものがなくなったというか。

娘の入院していた小児病棟には、いろんな病気を抱えた家族がいて、他のママさんはずっと付き添っている感じでした。わたしは仕事もしていたので、出ないといけない時間があったんですが、病室で化粧して、服も着替えて、そこから仕事に行っていたので、周りの人たちからしたら、「あのママさん、どこ行くん?」という感じだったと思うんですよ。

週1〜2回、数時間でしたけど、大好きな仕事をして、笑顔で帰ってきて、また一緒にいる時間を楽しむ。そのほうがいいなと感じたんです。自分にとっても、ハルにとっても。もし、周りの目を気にしていたら、仕事も全部断って、地味めな格好をして、ずっと一緒にいたと思うんです。でも、それって誰のため?全然、関係のない人たちのためにする必要ないやん、って。

基準となるのは、あくまで、ハルがどう思うか。もし、ハルがママにべったりの子やったら、「仕事、休むね」ってなったと思うんですけど、そんなんじゃなかったんですよ。言葉が喋れないから気持ちは分からないですけど、「ママ、もっと笑顔でいて」みたいな、そんな感じの子で。不思議なんですけど。だから、わたしは、わたしがイキイキとしていられるスタンスでいこうと。

削ぎ落としていかないと 、大切なものも大切にできない。

松井:ハルちゃんに気づかせてもらった、という感じがしますね。

田中:気づかせてもらったことは多いです。

たとえば、人って、結構、家族には冷たくあたったり、適当に接したりするけど、たまにしか会わない人とか仕事関係の人とかにはすごく優しくしたり、そう見せてしまうことってあるじゃないですか。でも、ほんまは逆だってことに気づいて。

ほんまに大切な人って誰なんやろ?たまに会う人よりも、ここにいてくれる人なんじゃないかって。そこって、ないがしろにしがちやなーって。自分の親とかもそうですけど。

松井:本当に大切なもの、本当に大切な人、考えさせられます。

田中:SNSを見ていても、人がよく見えることってあるじゃないですか。「活躍していていいな」とか、「楽しそうでいいな」とか。でも、気にしだしたらきりがないというか。気にしてもしょうがないというか。そういうのも、全然、気にしなくなりました。

松井:ものもそうですし、思考もそうだと思うんですけど、削ぎ落としていくと、たぶん、ラクになる。

田中:人って、「捨てたい」より「手に入れたい」という欲のほうが働くと思うんですよ。ものもほしい、人もほしい、経験もほしい。でも、全部を大切にすることってできなくて、だからこそ、削ぎ落としていかないと 、大切なものも大切にできないんですよね。

わたしにはハルという長女がいるって、みんな当たり前に思ってくれている。

松井:本を読んでいて思ったんですけど、田中さんやご家族の中に、ハルちゃんが今も一緒にいるような感覚ってありますよね。

田中:ハルの場合、今でも亡くなったという感覚があまりないというのが正直なところで。どっかにいるけど見えなくなったみたいな感じ。いるんですよ。うまく言えないんですけど。一生、ずっと一緒に生きていくんだろうな、っていう感じです。

松井:存在があるような感じですかね。わたしは、この本やこのイベントを通じて、ハルちゃんができることがあるんじゃないかな、と思ったんですよ。それが、「魂は死なない」ということなのかなと。

田中:ほんとに「死なない」と思います。ハルだけじゃなく、おじいちゃんおばあちゃんも、亡くなった人たちはみんな、見守ってくれていると思うんですよ。「大丈夫かー」って。それが、今は、普通にしっくりきていて。「そう思っておきましょ」みたいなことじゃなくて、「え、それって当たり前じゃない?」みたいな感じなんです。わたしの中で。

松井:「本を読んだ時にポジティブなパワーをもらった」とお伝えしたんですけど、その理由のひとつかもしれないですね。いなくなったんじゃなくて、今もいるから。悲しい感情だけでないのは、そういうことなのかなと。

田中:だと思います。終わっていない、っていうか。

松井:はたして、こんなにポジティブになれるのかな、っていうのがすごく不思議だったんです。本を読んで、会って、お話ししていても。でも、そばにずっといるし、いつも一緒にいるような感覚だから、なんですかね。

田中:何がそうさせているのかは分からないんですけど、今もハルの話は普通にします。周りからも、めっちゃ普通にハルの話が出てくるんですよ。

今、英会話を習っているんですけど、自己紹介の練習をしていて、こどもの人数の話になったとき、英語で亡くなったことの説明ができないので、思わず「one、息子がひとりいます」って言ったら、先生もハルのこと知っていて、「oneじゃなくてtwoじゃない? ハルちゃんの話が抜けているよ」って。わたしにはハルという長女がいるって、みんな当たり前に思ってくれています。

とにかく、読んでもらえる場を増やしたい。

松井:今、寄贈活動をされていますよね。

田中:全国の図書館に My Happiness Rule を寄贈するという活動を主人とさせていただいています。

もともとのきっかけは、出版社から「断裁します」という連絡が来たことなんです。本屋で売れなくなった本って、出版社に返却されて、最後、断裁されるんですね。もし、これがわたしのビジネス本だったら、「仕方ないな」と諦めもついたと思うんですけど、この本を切られるのは「絶対、嫌」と思ったんです。

それは主人も一緒で、「だったら買い取ります、全部」ってなって、買い取ったんですよ。2000冊。その後、主人と話していて、「図書館やったら、気軽にママさんも行きやすいし、読んでもらえるかな」ということで、寄贈活動を始めました。

「この本、置いてもらえませんか?」と図書館を回っていて、大阪はほとんど置いてもらえるようになりました。あと、周りの人が手伝ってくれて、愛媛とか滋賀とかいろんなところにも、ちょっとずつ置いてもらえるようになってきました。

松井:それって、大変じゃないですか?

田中:地道です、ほんと。でも、わたしたちとしては、とにかく、読んでもらえる場を増やしたい。読んでもらうまでのハードルが高い本だというのは分かっているんですよ。「出版おめでとう」という本ではないから。わたしの周りでも、「読みたい気持ちはあるけど、勇気がなくて読めない」という人がいます。

松井:確かに、「自分からアピールして買ってもらう」のは難しい本かもしれませんね。今後も、寄贈活動は続けていかれる予定ですか?

田中:はい、ずっと続けていきます。

 


以上、部分的ではありますが、イベントの様子をお届けしました。

子育てする上で、「日常が幸せだと感じられるかどうか」というのは、すごく大切なことであり、また、すごく難しいことであるように思います。だからこそ、「ハルと一緒に過ごした時間は幸せだった」という田中美帆さんの言葉は、聞いていて、心うごかされるものがありました。ひとりの親として、自分はそこまでできているだろうか、できるだろうか、と。

今後も、こういった機会をつくっていければと思っていますので、ご関心のある方は、ぜひ、ご連絡ください。また、本を置いてもらう場所として、図書館以外にも、児童館や病院の図書コーナーなどはどうか、という意見もあがっていましたので、関係者の方で、本を置いてみたいという方がいらしたら、ご連絡いただければと思います。

こちら、My Happiness Rule の置いてある図書館のリストです。
https://lineblog.me/mie/archives/8326422.html

田中美帆さん、図書館への寄贈活動以外に、メルカリとフリルとポルカでワンコイン販売を始めていらっしゃいますので、読んでみようかな、と思った方は、「マイハピネスルール」で検索してみてください。

■メルカリ
https://www.mercari.com/jp/

■フリル
https://fril.jp

 

最後に、イベント参加者の方から頂戴したご感想を、一部、ご紹介させていただきます。

>本を読んで受けた印象もあったんですけど、実際お会いして、お話をお聴きすると、胸に響く言葉だったり、温度や空気感だったり、活字だけでは伝わらないものがたくさんありました。

>本当に大変な体験だっただろうと思います。話したくないときもあるだろうから、自分のペースで活動を進めていっていただければと思います。

>人間って忘れる生き物だと思います。ある意味、人間の特性だなと。24時間、大切に思っていられない。でも、今回、お話を聴かせてもらったことで、「大切にしなきゃ」を思い出させてもらいましたし、今後も思い出すことが増えると思います。

>普段、ママだから我慢しなければいけないとか、あまり楽しそうにしてはいけないとか、そう考えてしまう自分もいて、「よくないなー」と思っていました。何が家族にとって幸せなのか、そのために何をすればいいのか、あらためて考えてみたいと思います。

>これから先、両親と過ごせる時間ってすごく短いな、っていうのを強く感じました。忙しいと、つい、メールが来ても返さなかったりするんですけど。こどものことだけじゃなくて、周りの人たちと一緒にいる時間を大事にしたいな、とあらためて思いました。