「ワークとライフは切り離さない」現代のあるべきワークライフバランスとは。【前田めぐる×上田涼子】
2018.04.16

前田めぐるさんと上田涼子さんがゲストのトークセッション「フリーランスという生き方」後編です。
☆前回記事はコチラ
ワークと、ライフは切り離さない…これからのワークライフバランス
●松井:お二人とも、家庭や育児との両立も上手にされているイメージがありますが、その辺りはいかがでしょうか。
●前田:ワークライフバランスと言うと「ワークとライフを分けてバランスを取っていきましょう」という考え方のように聞こえますよね。外では会社員として働き、家の中では家事育児をする母…スイッチのオンとオフを切り替えながら働く…というような感じで。
でもこれからはワークの中にライフがあって、ライフの中にワークがある…というように「暮らしながら働く」という考え方が主流になると思うんです。
例えば、家の中で子どもと遊びながら、何かワークに活かせるヒントが見つかるとか、ライフの中でも頭の中でワークの発想が思い浮かぶというような。ライフの中でワーク、ワークの中でライフを実践すると、アイデアが勝手にわいてきて自在に働けるんですよね。
なので、これからは、デスクワークの人もデスクにいる時だけがワークではない、そんな考え方で働けたらいい、と思いますね。
●松井:前田さんは、自分自身で強みを見つけてこられたんですか?
●前田:なんとなくフリーランスを始めたのですが、その頃は結婚直後で、独身の延長のようにライティングの作業中心で働いていました。でも、子どもが生まれると、それまでと同じように働くことが難しくなりました。そこで「できないことをまず言おう」と決めて 「急ぎの仕事はできません。納期の急がない企画の仕事をください」と伝えました。ライティング作業から企画中心の仕事へシフトしていったんです。
●松井:ということはライフステージの変化とともに、ご自身の強みを見つけて行ったという感じでしょうか。
●前田:そうですね。子どもを持ってからの私は、これまで以上に自分にできることを尖らせていくしかない、その尖らせたものを誰かに望まれたい、と思いながら働いてきました。
やってきたことを掛け算する。スペシャリスト&ゼネラリスト
●松井:上田さんは、ご自身のことをゼネラリストとおっしゃっていますが、前田さんが先ほどおっしゃっていたような「好きなものをやりきって尖らせてスペシャリストになる」とは、逆の考え方をされていますよね。
●上田:そうですね。スペシャリストは、1つ、2つのことをずっとやり続けて、気づいたら20年同じことをやっていた…というような人のことで、ゼネラリストは、私のように、興味を持つ対象がどんどん変わっていって、いろんなことをどんどんやっていく…というような人たちのことです。フリーランスの世界では、1つのことに対して何年やって来たか、という数字が大事な目安になってきたりするので、ゼネラリストは、その点で弱いな、と思っていました。スペシャリストになれない自分が、コンプレックスでした。「自分も、スペシャリストにならなければ」と。
心のどこかで、私は、1つのことだけを突き詰めてやりきることには向いていないと、分かっていたんでしょうね。
そんな時に、オヤノミカタの松井さんから、親の味方となる商品を紹介するライターのお仕事をいただいたんです。そこで、写真、文章、そして元々興味があった、身体に良い商品の知識など、これまでやって来たことが、点から線になったんですよね。ゼネラリストとしてやって来たことを掛け算にして、さらなる強みを見出せるんだって。それからは、プロのゼネラリストになろうって、考え方がシフトチェンジしたんです。
●松井:それを発信した時、反響はいかがでしたか?
●上田:救われましたというようなコメントが多数来ました。思っていた以上に多くのゼネラリストの方々が、スペシャリストになろうと頑張っていたんだなって。
●松井:前田さんは、そのことに関してどのようにお考えですか?
●前田:フリーランスでやっていくためには、スペシャリストの中に、ゼネラリストの面を持つことも必要だと思っています。やりたいことだけではなくて、ひとり株式会社のような(笑)、営業であったり会計であったりもやらなきゃいけないので。
●松井:そうなんですよね。なので私自身、スペシャリストの人が、得意なことだけに時間をつぎ込めるように、それ以外の部分を他の人がカバーできるような仕組みを作りたいと考えています。
●前田:ぜひ、作っていただきたいです。
これからのフリーランスと会社の関係性は、どのように進化するのか
●前田:今、会社の中でも、会社に属さない人が増えてきていますよね。時間が自由なフレックス制であったり、席が決まっていないフリーアドレス制であったり。副業が認められている会社も増えているし、それどころか副業を義務化している会社もあります。副業くらいできるスキルがなくてどうするの…という感じで。
なので、すごく面白い時代になってきたなとワクワクしています。組織の中に、フリーランスがたくさんいるイメージです。それぞれが得意なことであったり、好きなことであったり、組織の中で活かせることを自分からどんどんやっていく。そうすると、一人一人がレベルの高い仕事ができますし、会社のレベルも上がりますよね。これからの経営者は社員をフリーランス化して、相応の“自由”や“裁量権”を与えればいいと思います。
●上田:私も過去に会社員をしていた時代がありましたが、これからは、会社に属していても、やれと言われたことしかやらない人は、どんどん肩身が狭くなっていく時代だと思います。
またフリーランスを取り巻く環境は、ここ数年ですごく良くなってきていると感じています。フリーになって、これは困ったな…と思うことがあっても、他のフリーランスの方がもう解決してくださっていることが結構あるんですよね。また、フリーランスをサポートするサービスも増えてきています。なので、個人か、会社員か、それに対してはこだわらず、会社にいても、やりたいこと、興味があることに時間を費やせるようになればすごくいいなと思います。
●松井:では、最後に一言、お願いします。
●前田:告知になるのですが、2013年に出版したソーシャルメディア文章術という本が、今年の3月に大幅にバージョンアップして、文庫化されます。『この一冊で面白いほど人が集まるSNS文章術』という本です。前著を発刊した当時は、ブログの反応がすごく良くなった…という声をブロガーさんから多数いただきました。
上田さんもおっしゃったように、 SNSで発信することはフリーランスにとって欠かせないことなので、ぜひこの本を活用して、皆さんの強みや思いをどんどん発信してもらえたらと願っています。
●上田:実は年始からnoteというソーシャルメディアで、エッセイを書いてます。これまでエッセイは書いたことがなかったのですが、書き始めると、結構楽しくて。あと、これから新しいブログを立ち上げようと思っています。こちらの方は、ライフスタイルの発信が中心で、私も普段は、2人の子育て真っ只中なので、いかに効率よくご飯を作るか…など(笑)そういうことを書いていきたいなと思っています。今日は、本当にありがとうございました。
「ワークとライフは切り離さない」という観点から「ひとつのことを尖らせるスペシャリスト、自分のやってきた様々なことを強みにするゼネラリスト」という考え方まで。
今回のトークセッションは、新しい働き方のヒントがたくさん詰まっていました。
また、記事中に出てきた前田めぐるさんの著書『この一冊で面白いほど人が集まるSNS文章術』は先月発売となり、ご自身で「10倍活用する方法」のページも展開されています。
http://bit.ly/2JKOlB8
上田涼子さんは、以下のnoteにてエッセイを更新されています。
https://note.mu/ryokoueda
今回のイベントは、立ち上げ当初より幅広い分野の方から関心を集めており、世間の『働き方』への高い注目度を伺わせました。