「Nehan Lab.」――こどもと一緒に体験する、アートのいりぐち

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4月22日(土)、快晴の空の下、小学3年生の娘と一緒に、こども芸術教室Kidz Lab.の主催するイベント「Nehan Lab.」に参加させていただきました!

会場は、京都市南区の東寺。世界遺産にも指定された格式ある寺院境内での開催です。広大な境内は、ただでさえ、お散歩日和に元気な子どもと出かけるには絶好のロケーション。盛りだくさんの体験教室をハシゴして楽しみつつ、貴重な体験と思い出の一日となりました。

特別教室 名画を描こう!「わたしのまんだら」

さて、朝一番に娘が体験したのは、【Nehan Lab. 特別教室 名画を描こう!『わたしのまんだら』】というプログラム。特別教室は、普段、国内外で広く活躍するアーティストのみなさんが講師となって、この日のために考案されたオリジナルのプログラムだそう。普段からお絵かきの大好きな娘は、「ホンモノの絵描きさんに、私の描いた絵を見てもらいたい!」と、この教室をチョイスしました。

 

教室となる書院は、一般拝観客を受け入れておらず、通常ならば入ることのできないエリア。お庭に続く襖を開け放ち、気持ちのいい風と光が入る空間です。なかなか見ることのできない、端正で澄み切った庭園をじっくり拝見できるだけでも、今日は来てよかった!という晴れやかな気持ちになりました。

 

講師をつとめて下さったのは、こども芸術教室Kidz Lab.の講師であり、数々のライブパフォーマンスを手がける現役アーティストでもある、仙石彬人先生。

「東寺は曼荼羅のお寺です。曼荼羅って見たことありますか?」という仙石先生の問いかけから始まった教室は、こどもたちがわいわい集まって図録をめくるところから始まりました。やはり、曼荼羅をはじめて見る子どもたちが大多数。「ここに描かれているのって、神様?あっ、仏様か!」なんてやり取りを交えながら、初対面のこどもたち同士ではありますが、会場はリラックスした雰囲気です。

Photo : 村山真平 Shimpei Murayama

さて、子どもたちの目の前には、4つ切りサイズの白い画用紙が一枚。

一番初めに、画用紙の中央に好きな色のマジックで、大きな円をひとつ描きます。続いて、大きな円の周りを取り囲むように、好きな大きさの円を描いていきます。大きさも色もさまざまの円で埋めていく子もいれば、小さな円で画面を埋め尽くす子も。この時点で、すでに十人十色の感が出ていて、なかなか面白いものです。

 

「では、一番真ん中の丸の中に、自分を描いてください」

「自分の隣の丸には、自分の好きなもの、好きな人、宝物の絵を描いてください」

 

続く仙石先生の指示で、子どもたちの多くが最初に描いたのは家族の姿でしょうか。パパとママ、きょうだい、飼っているペット。続いて、好きなキャラクターやお気に入りのおもちゃ、食べもの、花や虫や石。みんな、滑り出しは好調で、どんどん描き進めていきます。思いつくものがあらかた出尽くしたのか、手が止まってしまった子のもとには仙石先生が歩み寄り、「これは何を描いたの?」「この隣はどうしようか?」と、自然に連想が進むように問いかけながら誘導してくれます。

「終わっちゃった人は色を塗って仕上げてくださいね」

「余白に四角や丸を足してもいいよ」

「もう一枚描いてみる?」

 

2時間という長丁場でしたが、子どもたちはみんな、驚くべき集中力で目の前の作品づくりに取り組みました。仙石先生のさりげないご進行もありますが、一番は「自分が好きなものを描く」というモチーフの魅力だったかもしれません。

 

大人のみなさん、こどものころ、なにが好きでしたか?

親のみなさん、子どもの頃に好きだったものを思い返してみてください。皆さんの「いま」と関係があるでしょうか?

今も同じものが好きだという方は、少なくないでしょう。大学進学や就職活動のころ、自分の得意なことや好きなことを生かせないかと悩んだことのある方もいるでしょう。

 

私たちは、今も、子どもの頃の自分の延長線上を生きています。

それは、子どもたちのこれからも同じです。

「私の娘は真っ先に、生まれたときからずっと一緒に暮らしている猫の絵を描きました。次に、4歳のころから続けているダンスとスイミング。愛用のクレヨン。遊具と花と果物。

将来は、ダンサーか絵描きさんになりたい」という娘。子どものころに大好きだったことでも、「これで食べていけるわけじゃないから…」なんて、ある程度年をとったら諦めてしまう人のほうがずっと多いのかもしれません。特に、芸術の分野はそれが顕著のように思います。

 

だけど、大人になってから、たとえば仕事の企画書を書くときに「そういえば私、昔からこういうの好きだったな」と思い当たることってありませんか。子どものころ好きだった分野では、何十年のブランクがあっても不思議と力が発揮できたりしませんか。

あるいは、友人関係がうまくいかないとき、恋人に振られたとき、自分が孤独だと感じたときに、絵や音楽や映像が、芸術が気持ちを救ってくれたことはありませんか。

 

仙石先生は、授業の終わりに、付き添いの大人たちに向かってこう伝えてくださいました。

「子どものころに好きだったものは、大人になってからの自分にもずっと影響を及ぼし続けます。今日描いた絵を、ぜひ、子どもたちが大人になるまで大事にしまっておいてあげてください」。

 

曼荼羅とは、円と四角形で構成された画面の中に、ご本尊と、ご本尊に関連のある諸尊などを体系的に整然と配置して描かれる宗教画のこと。密教において、仏様の悟りの境地である宇宙の真理を表したものとされています。

 

ですが、いま、子どもたちの前にある画用紙の中心に描かれているのは「わたし」の姿。そして、その周りを「わたし」が好きな人・もの・ことがずらっと取り囲んでいます。子どもたちにとっては、この一枚が、さながら今の「わたし」をかたちづくっているもの、特徴付けているもの相関図。「わたしのまんだら」、完成です!

Photo : 村山真平 Shimpei Murayama

実は、特別教室の間の2時間は、親の私にとっては過去未来の色々なことにゆったりと想像を巡らせる、贅沢な時間でもありました。私自身が幼かったころのこと。そして、娘が大きくなってからのこと。娘は、どんな大人になるのかな。私が娘にあれこれ手助けをしてやれるのは、せいぜいあと数年のことでしょう。でも、この先大きくなっても、この子の好きなものが、この子自身の支えになってくれますように。

 

気軽に立ち寄れるテント教室も多数!

書院の建物を出て境内に戻ると、屋外で行われている【Nehan Lab.テント教室】のほうも大盛況でした!テント教室は予約不要で、当日、気軽に参加できるワークショップの集まり。こちらも特別教室と同様、第一線で活躍するアーティストの皆さんが講師をつとめておられます。

 

さて、娘とともに立ち寄ったのは【ワタシのボクのホトケさま – オリジナル仏像づくり】のワークショップ。ホトケさまづくりをご指導くださったのは、普段、画家として、またアクセサリー作家としてもご活躍中の富永大士先生でした。

 

さまざまな形の木の端材から気に入ったものをいくつか選び、木材の接着面をやすりがけすることから始めます。滑らかになった面を木工用接着剤で貼り合わせて、ホトケさまの形をつくったあとは、子どもたちの本領発揮!色を塗って、顔や模様を描いて、色画用紙やアルミホイルを貼り付けて……、思い思いに仕上げていきます。

 

講師の富永先生ご自身も、実は3人のお子さんのお父さん。「ものづくりの楽しさを子どもたちに伝えて、自分が持っている技術やものづくりに対する思いを、次の世代に受け渡していくのも、僕たち大人の務めですよね」というお言葉には、私自身も大いに共感するところです。

 

「このワークショップで、子どもたちに大切にしてほしいと伝えたのは、自分の作品にこころを込めること。どんな分野のものづくりにおいても、作者のこころが、気持ちが、作品にとって一番大切な核になるんです。これから子どもたちが他の作品を作るときにも、ぜひ、それを意識してほしい」。

このホトケさまは、どんなホトケさま?何をしているところかな?何色にしようか?何を持っているの?どんな表情がいいかな?

 

子どもたち自身がつむいだ物語を、こんな風に作りたいと思った気持ちを、作品の中にこめていく。大人の目線では、上手に描く、キレイにつくる、ということに目が行きがちかもしれませんが、ただ整っているだけの作品では、見る人の心を揺さぶることはできないものです。

 

私自身も、気軽に立ち寄ったワークショップで、思いがけず、大きな宿題をいただいた気分になりました。ご自身がアーティストとして創作の世界の最前線に立っておられるからこそ、子どもたちに伝えられることがある。親と子どもたちにとっても、その生の声をお聞きできる、とても貴重な機会でした!

 

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そのほか、【みんなで大きなエマキモノをつくろう】では、巨大キャンバスの上を裸足でうろうろ歩き回っては、描きたい場所を見つけて座り込み、ずっと飽きずにお絵かきさせていただきました。誰かが描いた絵に付け足したり、先生が時折書き足してくれるのを眺めたり。家ではなかなかさせてあげられない経験(スペース上も、お掃除の手間からも!)に、娘も大喜びでした。

 

また、【家で眠ってるシャツにぺたぺた絵の具をぬろう!】では、お洗濯方法なども丁寧に教えていただき、娘も素敵なオリジナルTシャツを持ち帰ってご満悦。【ブローチづくり】のテントで作ったフエルトとボタンのお花のブローチは、早速、胸に飾りました。

Photo : 村山真平 Shimpei Murayama

たくさんのテント教室をハシゴして、娘も私も、一切飽きることなく丸一日楽しみました!また、作品の多くを持って帰ることができるのも、子どもたちにとってはうれしいポイント。たくさんの思い出とお土産を抱えて、ホクホクの笑顔で家路につきました!

 

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というわけで、さすが、常日ごろから子どもたちの芸術教室を運営するKids Lab.さん。体験型のプログラム/ワークショップがめいっぱい充実していた「Nehan Lab. 昼の部」でした。

「一日遊んで、体験して、それでおしまい」ではなくて、この日の経験が、多くの子どもたちにとって、思い出深いアートへのいりぐちになってくれるよう、願っています。

 

気が早いようですが、次回以降の開催も、心から楽しみに待ちたいと思います!

 

 


Nehan Lab.
http://www.nehanlab.com/

主催:こども芸術教室Kidz Lab.
http://kidzlab.info/