働く親にも優しい こども芸術教室 Kidz Lab.
2017.04.19

先日ご紹介した子どものアートフェスティバル Nehan Lab. を主催するのは、京都市内2カ所で、幼児〜小学生を対象に「美術教室」「ことば教室」「えいご教室」を開催しながら、週末や長期休みの体験プログラムを実施する こども芸術教室 Kidz Lab. さんです。どちらもすごく楽しそうな響き!Nehan Lab. のお話と一緒に、Kidz Lab.の取り組みや授業についても、代表の滝村さん・アーティストとして先生を務める仙石さんに教えていただきました。
「親が働いていても通わせられる習い事が、あればいいのに……と思った。」
この滝村さんの言葉を聞いて、なんてありがたいんだと心があたたまりました。共働きの家庭では、子どもが小さいうちの習い事はなかなか難しいですよね。私のむすこは週に1回テニスに行っているのですが、仕事の都合で送り迎えができなくて休ませたことが多々あります。「ごめんな」と謝ると「うん、いいよ」と返してくれるのですが、自分のせいで……と思うとやはり胸が痛みます。
子どもに色々な体験をさせたいと思いながらも送り迎えや付き添いができないという理由で習い事をあきらめている親御さんも多いと思う中、Kidz Lab.では、
・教室受講の前後の時間も子どもと一緒に過ごす見守りサービス
・タクシー会社と契約したドアトゥドアの送迎サービス
を提供するなど、仕事等で親が付き添えなくても安心して通えるように教室を運営されています。
子どもたちのキャンプなども企画されているそうで、春のプログラムを見てみると……
・昔ながらの無農薬農法を続ける上世屋の棚田で
しいたけの菌打ち+菜種の種植え+ジャガイモ植えなどを体験
・夕飯は農家さんからいただく野菜と宮津のお魚で海鮮鍋
・グンゼ本社にて社会見学
自然に触れ、地域の味を楽しみ、モノづくりの現場で学べるという盛りだくさんな2日間。普段はできない体験をさせてあげられると、親としてもすごく嬉しいですよね。それにしても、Kidz Lab.さんの活動の幅広さには驚きました。

(左から 仙石さん、滝村さん)
夢や目標に向かっていく力を育てたい
滝村さんは、音楽系の専門学校で講師をされていた時、「没頭して打ち込んでいるような事柄がない」「自分の人生の目標を持たない」「夢がない」という学生が多いことを切実に感じたそうです。それはなぜなのかと彼らと接する中で考え続けた結果、幼少期の体験に関心が向いていき、2011年にKidz Lab.を立ち上げ。
子どもの間に「長い時間をかけて何かに向き合う経験」を習慣的に持ち、集中力や深く考える力、様々な体験や経験から生まれる柔軟性や理解力を育てることが、大人になってからの豊かな自活力につながると考える滝村さん。Kidz Lab.の様々な活動のベースには「集中力・思考力・自立心の育成」というミッションがあります。

(アーティスト研究 – 伊藤若冲編)
芸術を通して「思考力」を育てると聞いてもピンと来ないかもしれませんが、たとえば、絵を描くことについて考えてみましょう。目の前にある真っ白い紙に
「何を描くのか」
「何色を使うか」
「大きさはどれくらい?」
「背景には何を描こう?」
というように、考えることが山ほどあります。しかも、正解がないので、頭の中の記憶や目の前のモノから自分でどう表現するかを決めていかないといけない。
大人の私たちが大きな画用紙を渡されて絵を描いてくださいと言われたら、戸惑ってしまいますよね。私は、子どもと一緒にレゴやお絵描きをして、自分の頭のかたさにはっとしたことが何度もあります。次々にブロックを組み合わせて家や乗り物をどんどん進化させていく子どもたち。それに対して、先に完成図をなんとなくイメージして、その通りに組んでいくことしかできない私の動きの鈍さ。

(体験教室 ヴィジュアル・リミックス・レコード)
こうした力の育成は、今、学校教育においても一番の課題になっています。吸収力のある子どもにとって学びの宝庫である、芸術教室。滝村さんがおっしゃる「自分の目的に合わせ、じっくり考えて自分のアイディアを練りだす時間を習慣的に持つこと」は子どもにとって大きな力になります。そうわかっていても、この「習慣的に」というのが家ではなかなか難しいので、Kidz Lab. の存在は本当にありがたいです……!
上手く描くことよりも、自分の表現を見つけることが大切。
Kidz Lab.の授業を見てみると、
「編集者になろう」
「あたらしいイキモノを考える」
「なが〜い列車製作所」
「ドンドンカンカンおんがくたい」
「アーティスト研究 草間彌生」
などなんともおもしろそうなテーマが並んでいます。そして子どもたちの作品の自由で大胆なこと!見ているだけでわくわくしてしまいます。

(体験教室 シャンデリア・アンブレラ)
「毎回、新しい画材やテクニックを取り入れて授業を進めていきますが、上手に描くことを目標にはしません。」
という仙石さんの言葉からも、単に美術を教えるのではなく、様々な面から子どもたちの成長をサポートしたいという思いを感じます。
子どもたちにもっと本物のアートに触れてほしい
数年前までは子どもと接する機会なんてなかったという仙石さんがKidz Lab.など子ども向けの活動を始めたのは、知り合いに頼まれて開いた子ども向けワークショップがきっかけでした。
「すごいんですよ、子どもって。僕はずっとその場所・その時間にしかないライヴパフォーマンスを大切にしてきたけれど、子どもたちと一緒だと、本当に何が起こるかわからない。会場を探検しだしたり、僕が30分以上かけて使う量のインクを5分で空にしちゃったり。僕が考えていた”ライヴ”の更に先をいっているというか……衝撃を受けました。」
と嬉しそうに語ってくださいました。
また、フランスに渡航し国立劇場のステージに立った際に、子どもや障害者のためにもライヴをしてほしいと依頼を受けたことも、今の活動に影響しているそうです。
「海外では、子どもがアートに触れる機会が生活の中にたくさんあります。ライヴの後に子どもたちからたくさん質問を受けたんですけど、ハッとさせられるような問いを次々に投げかけられて、すごく貴重な体験になりました。
日本の子どもたちにも、子ども向けに作られた絵や音楽だけじゃなくて、アーティストが全力で取り組むライヴや作品にもっと触れてほしいと思っています。Nehan Lab. に参加するアーティストや体験教室の内容も、けっこうトガッたものもありますが、そのままを見てほしい。
それに、アートだけじゃなくて、子どもの時に食べ物でも虫でもお寺でもなんでも、どんどん新しいものと出会って色んな世界を見ることが大切だと思います。」
学校教育でもよく言われる「生きる力」とは。
今、日本の教育のキーワードとなっている「生きる力」。国としても、思考力・判断力・表現力の育成に力を入れています。
学校の授業や評価も私たち親世代の時とはずいぶん変わっていますし、2020年には従来のセンター試験に代わって、記述式の問題を含んだ新大学入試がスタートする予定です。
単純に覚えたり計算したりするだけではなく、
「なぜそうなるのか」を考えることや、
「じゃあこうしてみよう」と発想すること、
「自分はこう思う」と表現すること。
芸術分野に関しても、小学校の懇談会で
「文科省が定めた評価方法では、昔と違って、図工や音楽の成績に上手下手は全く関係ありません。取り組みの姿勢や、自分で考えて表現できているかが評価基準になります。」
という話がありました。ものを作ることはまさに思考錯誤の連続。生きる力を育む活動なのだと、改めて感じました。
20才未満入場無料のライヴパフォーマンス「観光地」
さて、Kidz Lab.が主催するアートフェスティバルNehan Lab. についても前回に続いて少しご紹介を。仙石さんがプロデュースする夜の部のライヴ「観光地」は、今回のNehan Lab.で4回目になります。
2012年に京都府庁旧本館でスタートし、日蓮総本山本法寺・尊陽院、静岡のかつては大衆演芸場や映画館として親しまれたホールを経て、東寺へ。
「観光地」という名前には、その場所が持つ魅力に光を当て、照らしだすという思いが込められています。世界遺産 東寺の五重塔を背にしたステージでは、どんな光を観せてくれるのでしょうか。
Nehan Lab.のくわしい内容については「お寺 × アート × こども│Nehan Lab.│4/22(土)」をご覧ください。昼間も、10mの巨大キャンバスでのお絵描きやオリジナル仏像作り、ダンス教室など楽しいプログラムが盛りだくさんです。
こども芸術教室 Kidz Lab.
[ 開講場所 ]
〒604-0906 京都市中京区東椹木町110 あずさ塾御所南教室
〒612-8053 京都府京都市伏見区東大手町749-3F プレスクール・エンゼルネット